「友人と引っ越しの相談をしていたら、翌日スマホにその地域の賃貸物件の広告が…」「百貨店で高級バッグを眺めていたら、後日そのバッグの広告がスマホに表示された」

このような、まるで生活を監視されているかのような薄気味悪い経験をしたことはありませんか。誰かに聞かれているのではないかと不安になる方も多いのではないでしょうか。
ご安心ください。今回の記事では、なぜこのようなことが起こるのか、その仕組みと具体的な事例を詳しく解説します。
そして、皆さんのプライバシーを守るために、今日からできるスマートフォンの設定変更についてもご紹介します。
スマホは本当に盗聴しているのか?海外の検証事例をご紹介
スマホが会話を盗聴しているのではないかという疑問は、多くの人が抱く共通の不安ではないでしょうか。
実際に、VPN(仮想プライベートネットワーク)サービスで有名なセキュリティ会社である「NordVPN」が、この疑問を検証するある実験を行いました。
実験内容は、3人の従業員に普段全く興味のない話題を一つずつ選んでもらい、休憩時間にスマホに向かってその話題について話しかけるというものです。この間、選んだ話題について一切ネット検索を行わないという厳格なルールも設けられました。
その結果、アラスカ旅行について話したローラさんには格安航空券や旅行会社の広告が、ペットのトカゲについて話したピーターさんには地元のペットショップや獣医、ドッグトレーナーの広告が頻繁に表示されるようになりました。そして、新車のボルボについて話したジェイソンさんには、見事にボルボの広告が多数表示されたのです。
この結果について、NordVPNは「スマホが盗聴している証拠としては弱い」と結論付けてはいますが、偶然では片付けられない不気味な一致ではないでしょうか。この実験から、スマホが私たちの日常会話を何らかの形で「聞いている」可能性を強く感じさせます。
スマホ・テレビ・AIスピーカー、私たちの情報を監視する仕組みとは?
私たちが普段使っているスマートフォンやテレビ、AIスピーカーといったデバイスは、様々な方法で私たちの情報を収集し、監視している可能性があります。
例えば、テレビには「ACR機能」という監視システムが搭載されている場合があります。これは、皆さんが見ているテレビの画面を0.5秒間隔でキャプチャし、その情報を認証サーバーに送信するというものです。これにより、「いつ何を見たか」「何が好みか」といった視聴データが分析され、広告会社に販売されているのです。テレビから情報が漏洩していると聞くと、かなり嫌な気持ちになりますね。
スマートフォンについても、過去にいくつかの驚くべき事例が報告されています。2019年には、AppleがSiriの性能向上のため、iPhoneやApple Watchから収集した利用者の会話内容を、アイルランドの提携会社に送り、数百人規模のスタッフが音声を聞き、分析していたことが発覚しました。
この音声データには、病院での診察内容や薬の取引現場、プライベートな会話など、プライバシー的に完全にアウトなものが多く含まれていたといいます。Apple側は「利用規約に音声収集の記述がある」「Siriが起動していない時の音声は誤作動によるもの」「広告には利用していない」と主張しましたが、アメリカの消費者が集団訴訟を起こし、Appleは約150億円以上の和解金を支払うことになりました。この訴訟後、Appleはプライバシーポリシーを大幅に改善し、設定次第で人によるチェックが行われないように変更しています。
また、AmazonのAIスピーカー「Alexa」でも同様の事件が起きています。ある夫婦がAlexaの前で家のフローリングの話をしていたところ、知人から「Alexaに盗聴されている。すぐに電源を切るべきだ」と電話がかかってきました。知人がメールで、夫婦がAlexaの前で交わしたフローリングに関する会話の音声データを受け取っていたというのです。AmazonはAlexaが音声をメールで送るよう指示を受けたと「誤解」したための誤作動だと認め、謝罪しました。Amazonも数千人規模の従業員がAlexaから収集した音声を解析し、AI学習に充てていたことが判明しており、特に子供の音声が重点的に解析されていたとして、約38億円の和解に至っています。
デバイス間で情報を連携させる「超音波クロスデバイストラッキング」とは?
さらに恐ろしいことに、私たちのスマートフォンやテレビ、パソコンといったデバイスは、互いに情報を連携し合っている可能性があります。これが「超音波クロスデバイストラッキング」と呼ばれる技術です。
これは、テレビのCMなどに人間の耳には聞こえない高周波の「オーディオビーコン」が仕込まれており、そのビーコンを皆さんのスマホにインストールされたアプリが収集するというものです。このアプリは、そのスマホの持ち主が何のテレビ番組やCMを見ているかという情報を得ることができます。
同様に、パソコンで特定のウェブサイトを閲覧した際、そのサイトに仕込まれたビーコンが発せられ、それを近くにあるスマホが拾うこともあります。これにより、広告会社は「このパソコンを使っている人物とこのスマホの持ち主は同一人物だ」と認識し、より詳細な個人情報を紐付けることが可能になります。実際に、エドワード・スノーデン氏が明らかにした情報の中には、オーディオビーコンを拾うことで、街中の個人の移動経路を追跡することも可能であると示されています。
これは、同じ空間に複数のデバイスが存在するだけで、それらのデバイスが互いに監視し合い、私たちの行動パターンや興味関心をより正確に把握していることを意味します。この仕組みによって、皆さんの行動が時間差で広告として流れ出すという、一見不思議な現象が起きているのです。
プライバシーを守るために!今すぐ見直すべきスマホ設定
これらの事例から、私たちのプライバシーが知らず知らずのうちに侵害されている可能性は否定できません。しかし、心配する必要はありません。いくつかの簡単な設定変更で、情報の漏洩リスクを大幅に減らすことができます。
1. 音声アシスタントの機能を見直す
Siri(iPhone)やGoogleアシスタント(Android)といった音声アシスタントは、皆さんからの呼びかけにいつでも反応できるよう、常に聞き耳を立てています。これにより、余分なバッテリーが消費されるだけでなく、設定によっては皆さんの音声が人間のスタッフにチェックされる可能性もあります。
**iPhone(Siri)の場合**
- 「設定」アプリを開き、「プライバシーとセキュリティ」をタップします。
- 画面を一番下までスクロールし、「解析と改善」をタップします。
- 「Siriと音声入力の改善」がオンになっている場合はオフに切り替えます。これにより、Siriが拾った音声がAppleに利用されるのを防ぎます。
- 一つ前の画面に戻り、再度「Siri」をタップします。(iPhone15以上の機種では「Apple Intelligence と Siri」をタップします。)
- 「“Hey Siri”を聞き取る」がオンになっている場合はオフに切り替えます。
- 「サイドボタンを押してSiriを使用」がオンになっている場合はオフに切り替えます。
- 「Siriにタイプ入力」がオンになっている場合はオフに切り替えます。
- さらに一つ前の画面に戻り、「Siriと音声入力の履歴」をタップします。
- 「Siriと音声入力の履歴を削除」をタップし、過去の履歴を消去します。
**Android(Googleアシスタント)の場合**
Android端末の場合、設定画面が機種によって異なりますが、基本的な考え方は同じです。Googleアシスタントをオフにすることで、聞き耳を立てられなくなり、バッテリー消費も抑えられます。ただし、Googleアシスタントをオフにすると、画面認識機能など一部の機能が使えなくなる場合があります。ご自身の利用状況に合わせて設定を検討してみてください。
- 「設定」アプリを開き、「セキュリティとプライバシー」を探してタップします。
- 「プライバシー管理」をタップし、「権限マネージャー」に移動します。
- 権限マネージャー内で、「マイク」を探してタップします。
- マイクへのアクセス権限を持つアプリのリストが表示されます。必要のないアプリ(電卓、ゲームなど)のマイクへのアクセスをオフにします。
- 同様に、「位置情報」「カメラ」「写真と動画」など、他の権限についても見直し、不要なアプリへのアクセスをオフにすることをおすすめします。
- 「設定」のトップ画面に戻り、「アプリ」をタップします。
- 「デジタルアシスタントアプリ」を探してタップします。
- 「デフォルトのデジタルアシスタントアプリ」を「なし」に設定します。
2. アプリのビーコン(位置情報、マイク、カメラ、写真、Web閲覧履歴など)アクセスを停止する
多くのアプリは、その機能とは直接関係のない個人情報へのアクセス権限を求めてきます。例えば、電卓アプリがマイクの権限を求めてくる場合などです。このようなアプリは、無断で情報を収集している可能性があるため、権限を剥奪することをおすすめします。
- 「設定」アプリを開き、「プライバシーとセキュリティ」(またはAndroidの場合は「セキュリティとプライバシー」)をタップします。
- この画面で「マイク」「カメラ」「位置情報」「写真」「Webブラウザのパスキーへのアクセス」といった項目を探します。
- 各項目をタップすると、その権限を持つアプリのリストが表示されます。
- それぞれのアプリについて、その機能にマイクやカメラなどの権限が必要ない場合は、躊躇なくオフに切り替えてください。例えば、位置情報サービスが常にバックグラウンドで動作している必要がないアプリは、「使用中のみ許可」または「許可しない」を選択します。
たとえ誤って必要なアプリの権限をオフにしてしまっても、次回そのアプリを使用する際に再度許可を求められるため、心配は要りません。
3. 【おまけ】スマートテレビのACR機能を解除する
スマートテレビに搭載されているACR機能(自動コンテンツ認識機能)は、皆さんの視聴履歴を0.5秒間隔でキャプチャし、外部サーバーに送信しています。これを解除することで、テレビからの情報漏洩を防ぐことができます。
テレビの機種によって解除方法が大きく異なるため、具体的な手順をここで全て説明することはできません。お使いのテレビの型番をChatGPTやGeminiなどのAIチャットボットに問い合わせて、「[テレビの型番] ACR機能 オフにする方法」と尋ねてみてください。詳細な手順を教えてくれるはずです。
もし、このACR機能についてさらに詳しく知りたいという方は、弊社の別のブログ記事で詳細に解説しています。ぜひそちらもご覧ください。
まとめ
今回の記事では、スマートフォンをはじめとする様々なデジタルデバイスが、私たちの生活をどのように監視し、その情報がどのように広告やその他の目的に利用されているかについて解説しました。
これらの情報収集の仕組みを知ると、少し怖いと感じるかもしれません。しかし、適切な設定を行うことで、皆さんのプライバシーをしっかり守ることが可能です。まずは落ち着いて、一つずつ設定を見直してみてください。これらの対策を講じることで、より安心してデジタルライフを送ることができるようになります。


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