「ノートPCが盗まれてもBitLockerで暗号化しているから大丈夫」と思っていませんか?実はその設定によっては、BitLockerの暗号化をあっさり破られてしまう脆弱性が2026年5月に公開されました。
その脆弱性の名前は「YellowKey(CVE-2026-45585)」です。特殊なUSBメモリを挿して再起動するだけで、BitLockerで保護されたドライブの中身を丸ごと読み取れてしまうという、非常に深刻な問題です。
この記事では、YellowKey脆弱性の仕組みをわかりやすく解説し、今すぐできる対策(特に「TPM+PIN」への切り替え手順)を詳しく説明します。
まず確認!あなたのPCは対象?
YellowKey脆弱性の影響を受けるのは以下のWindowsバージョンです。
影響を受けるOS: Windows 11(24H2・25H2・26H1)、Windows Server 2025
影響を受けないOS: Windows 10(WinREの仕組みが異なるため非対象)
さらに重要なのは「BitLockerの設定方法」です。TPMのみでBitLockerを有効にしている場合は脆弱性の影響を受けます。TPM+PINを設定している場合は現時点で公開されている攻撃コードでは破れません(ただし後述の注意点があります)。
Windows 11 HomeやProでBitLockerを有効にしたとき、多くの場合はデフォルトで「TPMのみ」になっています。PINを設定した記憶がない方は、TPM-onlyの可能性が高いです。
YellowKey脆弱性の仕組み
少し技術的な話になりますが、なぜこんな攻撃が可能なのかを理解しておくと、対策の重要性がわかります。
Windowsには「WinRE(Windowsリカバリー環境)」という、PCが起動できないときなどに使う回復用の環境が内蔵されています。YellowKey脆弱性はこのWinREを悪用します。
攻撃の流れはこうです:
① 攻撃者が「FsTx」という特殊なフォルダを仕込んだUSBメモリを用意する。
② 対象のPCにそのUSBを挿し、WinRE(回復環境)を起動させる。
③ WinREが起動中に「FsTxフォルダ」を自動処理するとき、通常の回復UIの設定ファイル(winpeshl.ini)が削除されてしまう。
④ 設定ファイルがないと、WinREはフォールバックとして「コマンドプロンプト(cmd.exe)」を起動してしまう。
⑤ このコマンドプロンプトはBitLockerで保護されたドライブにフルアクセスできる状態になっている。
つまり、BitLockerはTPMが自動的に鍵を解除して「ドライブを復号済みの状態」にしてしまうため、コマンドプロンプトからファイルが丸見えになるということです。特別なツールも、Windowsのログインパスワードも不要です。
なお、USBを使わずにPCのEFIパーティションに直接書き込む方法や、ドライブを取り外して別のPCでEFIパーティションを改ざんしてから戻す方法なども報告されており、ノートPCを短時間でも手放した場合に危険です。
TPM+PINなら安全?注意点もあります
「TPM+PIN」を設定していれば、現在公開されている攻撃コードでは破れません。PINがないとTPMがドライブの鍵を解除しないため、攻撃者がコマンドプロンプトを起動できても、ドライブは暗号化されたままです。
ただし注意点があります。YellowKeyを発見した研究者は「TPM+PINも破れるバリアントを開発・テスト済みだが、まだ公開していない」と明言しています。つまり、TPM+PINも将来的には破られる可能性があります。
また、別の攻撃手法として過去には「TPMバス盗聴」(TPMチップとCPUを繋ぐ通信線から暗号鍵を盗み取る方法)も実証されています。こちらは特殊なハードウェアが必要ですが、専用チップ搭載のラップトップが対象です。
対策は多層防御が基本です。TPM+PINへの切り替えは必須ですが、それだけで完全に安全というわけではありません。
対処法①:Windowsアップデートを最新にする(KB5094126)
Microsoftは2026年6月のWindowsアップデートでYellowKey脆弱性への緩和策を含む更新プログラムをリリースしました。まずはWindowsを最新の状態に保つことが基本対策です。
① スタートメニューを開き、「設定」をクリックします。
② 「Windows Update」をクリックします。
③ 「更新プログラムの確認」をクリックし、すべてのアップデートを適用します。
④ PCを再起動して更新を完了させます。
なお、このアップデートはWinRE内の脆弱なコンポーネントを修正するものです。Windowsアップデートを適用するだけでなく、後述の「TPM+PIN設定」も合わせて行うことをMicrosoftは強く推奨しています。
対処法②:BitLockerをTPM+PINモードに切り替える(最重要)
これが最も重要な対策です。現在「TPMのみ」でBitLockerを使っている場合は、「TPM+PIN」に切り替えることでYellowKey攻撃を防ぐことができます。
設定にはPowerShell(管理者権限)を使います。手順はやや技術的に見えますが、コマンドをコピー&ペーストするだけなので安心してください。
【事前確認】現在のBitLocker設定を確認する
① スタートメニューを右クリックし、「ターミナル(管理者)」を選択します。
② 以下のコマンドを入力してEnterを押します。
manage-bde -protectors -get C:
③ 表示される「プロテクターの種類」を確認します。「TPM」とだけ表示されている場合は切り替えが必要です。「TPM と PIN」と表示されていれば既にTPM+PIN設定済みです。
【設定変更】TPM+PINプロテクターを追加する
① 引き続き管理者PowerShellで以下のコマンドを入力します。
manage-bde -protectors -add C: -TPMAndPIN
② 「PINを入力してください」と表示されるので、覚えやすい数字のPIN(6桁以上推奨)を入力します。
③ 「PINを確認してください」と表示されるので、同じPINをもう一度入力します。
④ 「プロテクターが正常に追加されました」と表示されれば成功です。
【古いTPM-onlyプロテクターを削除する】
① 再度以下のコマンドで現在のプロテクター一覧を確認します。
manage-bde -protectors -get C:
② 「TPM」(PINなし)のプロテクターに表示されている「ID」({xxxxxx-xxxx-…}という形式)をメモします。
③ 以下のコマンドでそのIDのプロテクターを削除します(IDの部分は自分の環境のものに置き換えてください)。
manage-bde -protectors -delete C: -id {ここにIDを貼り付け}
④ PCを再起動すると、起動時にPIN入力を求める画面が表示されるようになります。設定したPINを入力してWindowsを起動してください。
⚠️ 注意:PINを忘れると起動できなくなります。必ずBitLocker回復キーをMicrosoftアカウントやUSBに保存しておきましょう。回復キーは「manage-bde -protectors -get C:」コマンドで確認できます。
対処法③:WinREを無効化する(上級者向け)
WinRE(回復環境)そのものを無効化することで、YellowKey攻撃の入口を塞ぐ方法もあります。ただし、この設定を行うと「Windowsが起動しないときの自動修復」や「PCをリセットする」機能が使えなくなります。企業の管理者やIT知識のある方向けの対策です。
① 管理者PowerShellで以下のコマンドを実行します。
reagentc /disable
② 「WINREの状態:無効」と表示されれば完了です。
WinREを再び有効にしたい場合は「reagentc /enable」で元に戻せます。なお、Windowsアップデート適用時に自動的に再有効化される場合があるため、定期的に確認することをお勧めします。
そのほかの対策:盗難・紛失への備え
YellowKeyのような物理アクセスを使う攻撃は、ノートPCの盗難・紛失が最大のリスク要因です。BitLockerの設定と合わせて、以下の対策も意識しておきましょう。
重要なファイルはOneDriveや外付けHDDにバックアップする:万が一PCが盗まれたとき、データが失われないよう定期的なバックアップが大切です。
Windowsの「デバイスの検索」を有効にする:設定→プライバシーとセキュリティ→「デバイスの検索」をオンにすることで、紛失したPCの場所をMicrosoftアカウントから追跡できます。
PCを人の多い場所に放置しない:YellowKey攻撃には物理的なアクセスが必要です。カフェや空港でPCを席に置いたまま離れることは避けましょう。
まとめ
YellowKey(CVE-2026-45585)はBitLockerのTPM-only設定の盲点を突いた脆弱性で、ノートPCを使うすべてのWindows 11ユーザーが対策を検討すべき問題です。
今すぐできる対策をまとめると次のとおりです。
対処法①:Windowsアップデートを最新にする(KB5094126を含む6月更新を適用)
対処法②:BitLockerをTPM+PINモードに切り替える(最重要)
対処法③:WinREを無効化する(上級者向け・IT管理者向け)
特にノートPCをよく持ち出す方は、今すぐTPM+PINの設定を行うことをお勧めします。PINを設定することで「毎回起動時にPINを入力する」という手間は増えますが、大切なデータを守るためのコストとしては十分に見合うものです。
設定変更の際は必ずBitLocker回復キーを控えておき、安全な場所に保管しておきましょう。万が一PINを忘れた場合でも、回復キーさえあればPCを起動できます。
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よくある質問
まず確認!あなたのPCは対象?
YellowKey脆弱性の影響を受けるのは以下のWindowsバージョンです。
YellowKey脆弱性の仕組み
少し技術的な話になりますが、なぜこんな攻撃が可能なのかを理解しておくと、対策の重要性がわかります。
TPM+PINなら安全?注意点もあります
「TPM+PIN」を設定していれば、現在公開されている攻撃コードでは破れません。PINがないとTPMがドライブの鍵を解除しないため、攻撃者がコマンドプロンプトを起動できても、ドライブは暗号化されたままです。
対処法①:Windowsアップデートを最新にする(KB5094126)
Microsoftは2026年6月のWindowsアップデートでYellowKey脆弱性への緩和策を含む更新プログラムをリリースしました。まずはWindowsを最新の状態に保つことが基本対策です。

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